「できていたことが、できなくなっていく」「会話が、かみ合わなくなってきた」——認知症の親と向き合う中で、戸惑いや、つい強くなってしまう言葉に、自分を責めていませんか。私はケアマネとして6年間、認知症のご本人とご家族に寄り添い、私自身も母と義母を介護しました。その経験から、認知症の方への「接し方のコツ」と、介護するあなた自身が抱え込まないための方法を、お伝えします。
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できないことが増えるのは、ご本人が一番つらい
できていたことができなくなる戸惑い、会話が難しくなるもどかしさ。ご家族が苛立ってしまうのは、決して悪いことではありません。それだけ一生懸命、向き合っている証です。
でも、忘れないでほしいのは——分からないことが増えていくのは、ご本人が一番、混乱して不安だということ。幻覚や幻聴が現れることもあり、ご本人の心は大きく揺れています。
そんな時、何かあっても介護する側が「大丈夫だよ」という穏やかな気持ちで接することが、ご本人の心と体の安定につながります。
認知症の方への接し方、大切にしたいこと
私が現場で大切にしていたのは、次のようなことです。
- 安心して話していただける関係を築く
- 傾聴する(じっくり聞く)
- 否定しない
- 急かさない
- ご本人のペースに合わせる
- 安心できる声かけをする
そして、目を見て、笑顔でお話しすること。
ここで、ひとつ私の経験をお話しさせてください。母の闘病中、言葉があまり出なくなってきた頃、関わる医師や看護師、ケアマネや訪問看護師の方々が、私たち家族にだけ話をするようになりました。すると、母は少し寂しそうだったのです。
その経験から、私は、ご本人がいる場では、たとえ分かりづらい内容でも、短く・分かりやすく・ご本人を中心にお話しするようにしてきました。認知症があっても、ご本人は確かに「その場にいる」のですから。

つい、やってしまいがち。でも避けたい対応
物忘れや理解力の低下、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)から、失敗や思いもよらないことも起こります。そんな時、避けたいのは——
- 声を荒げて叱る
- 否定する
- 放置や、無視
叱られたり否定されると、傷つきます。それは、私たちでも同じですよね。そして、放置や無視は孤独感につながり、認知機能の低下を招く心配もあります。
「困った場面」、どう向き合う?
現場でよくあった場面と、私の対応をご紹介します。
【同じことを何度も聞く】
何度説明しても「聞いていない」と言われる時は、お部屋にノートを置かせていただき、日付と内容を書いて説明し、また聞かれたら、そのノートを一緒に見ながらお伝えしていました。予定は、カレンダーに書き込むのもおすすめです。
【物を盗られた、と言う】
否定はせず、まずお気持ちに寄り添ってお話を聞き、「一緒に探しましょう」と一緒に探していました。見つかる時もあれば、見つからない時もあります。それでも、「一緒に探してくれた」という安心が、何より大切です。
【急に怒り出す、泣き出す】
こんな時も、同じように、お気持ちに寄り添い、じっくり傾聴することを心がけていました。

介護する”あなた自身”の心も、どうか大切に
認知症の介護は、先が見えにくく、心がすり減りやすいものです。だからこそ、ご家族が抱え込まないことが何より大切です。
- 家族や友人、同じ状況の人と、気持ちを共有する
- ケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の高齢介護課に相談する(要介護なら、月1回はケアマネの訪問があります。気軽に何でも話してください)
- レスパイト(介護者の休息)として、ご本人にショートステイを利用していただき、ご家族は介護から離れて休む
私自身、介護中はいつも気が張っていて、その場から離れないと気が休まりませんでした。介護する人が倒れてしまわないためにも、こうしたサービスを、どうか遠慮なく使ってください。ご本人にとっても、普段からショートステイを経験しておくと、いざという時にも安心して利用でき、将来、施設を考える時の選択肢にもなります。
また、離れている時間や、目が届きにくい時の見守りには、認知症の方に対応したセンサー見守りアイシルのようなサービスを取り入れるのも、ご家族の負担を少し軽くする一つの方法です。
一人で抱えないで——相談できる場所
「どこに相談すれば…」という時のために、相談先をまとめておきます。
- 地域包括支援センター……お住まいの市町村に必ずあります
- 認知症疾患医療センター……認知症の診断・治療・相談ができる専門の医療機関
- 認知症の人と家族の会(電話相談)……0120-294-456(平日10〜15時)。同じ立場の人が、話を聞いてくれます
(出典:厚生労働省「認知症に関する相談窓口」、公益社団法人 認知症の人と家族の会)
最後に
それぞれの環境で、認知症の親を支えておられるご家族へ。どうか、一人で抱えないでくださいね。ケアマネジャーや地域包括支援センターなど、相談できる場所は、ちゃんとあります。
ご自身のことも大切にしながら、頼れるものは、どうか活用してください。
あなたが穏やかでいられることが、ご本人にとっての、何よりの安心になりますから。
